本専攻の目的

九州大学大学院医学系学府は、医学に関する社会の多様なニーズに応える人材を組織的に養成することを目的としています。 (九州大学大学院医学系学府規則第1条の2)
また、専門職学位課程は、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的としています。(専門職大学院設置基準第2条第1項)

公衆衛生系専門職大学院に共通に課せられた基本的使命は、国内外の行政機関・保健医療や福祉、環境に関する諸機関・教育研究機関・民間組織等において求められる公衆衛生課題の解決に貢献する専門的知識・技能を身につけ、さらには広い見識と高い職業倫理観をもった人材を養成することです。

それらを踏まえ、「専門分化した医療技術を、人々が安心・納得・一体感を持って生活し、人生を過ごせるよう統合・調整・組織化できる高度な専門職業人の育成」を本専攻の目的としています。

 

本専攻の特色

「医学に関する社会の多様なニーズに応える人材の養成」及び「多様な分野・組織で多様な公衆衛生課題の解決に貢献する人材の養成」を図るべく、医療政策、医療経営、医療管理、医療コミュニケーション等について、専門知識を習得し、医療経営・管理の実践において中心的役割を担う人材を育成することを目的としています。現場の問題に対し、目的を明確にし、具体的に対策を組み立て、結果を評価し、改善する能力を育成するとともに、保健医療の実践にあたり中心的役割を担えるよう、専門的知識を持った人材を養成しています。

医療の分析・結果を把握し、具体的に対策を組み立て、採択された対策の再分析と結果を把握するなど医療の質の改善のための不断のサイクルを回すことができる人材、コミュニケーションを通し根拠をもとに、周囲のスタッフと現場の認識を共有し、改善に向けた共同作業を行いながら、自身も組織も成長していこうという志向性を持つ人材、そして、利害関係者の多様な利害を調整し、コンセンサスを得るプロセスを担うことができる人材を育成することを目指しています。

 

医療経営・管理の専門大学院をなぜつくったのか?
日本においては、医療の在り方や政策がこれまで行政と医師会とで決められていた。これは、当然のことながら、行政は医療費抑制のための規制を考え、医師会も一般の国民からすれば利益誘導ととられるなど、根本的な間題を抱えている。大学において中立の立場で、純学問的に医療の在り方や政策を検討する講座がなかったことが間題であり、平成7 年に九州大学では医学系研究科に医療システム学をいち早く作り、School of Public Health(公衆衡生大学院) にならって一貫した教育・研究の場として、今回の専門大学院の設置となった。医療保険制度の改革案が厚生労働省から発表されたが、この専門大学院が人間の営みである医療やその政策に適正な提言を行い、日本の医療に貢献してほしい。 これまでの大学は研究に重点を置き、学生の教育に熱心でなかった面があり、教官もこれからは、研究は世界に、教育は学生に、を視点に取り組む必要がある。九州大学は、世界の教育・ 研究拠点の構築に向け、先駆的改革を進めており、その一つに学際的教育研究の開拓に教官が柔軟に対応できる学府・研究院制度の創設がある。その制度によって本専門大学院に人間環境学・法学・経済学研究院に籍を置く教官が参加できるようになった。 また、21 世紀プログラムとしていずれの学部にも属さない学生を選抜して、自主的学習をもとに学部を越えた幅広い知識を身につけ、大学院の専門的数育につなげ、専門性の高いゼネラリスト、21 世紀のリーダーを育成する試みも実施している。本専門大学院はこうした九州大学の大きな取り組みの一つであり、大きく育ち、日本の豊かで信頼にたる医療の構築に役立つことを期待している。

(元九州大学総長 杉岡洋一 出典 21世紀に応えるビジネススクール)